スリールの想い

この子は「ダイ」

初めて見た時は、あまりに皮膚の状態が悪く、老犬だと思いました。

でも、生後7ヶ月の子犬でした。

身体はおびただしい数のノミが寄生し、炎症で腫れ、瘡蓋だらけ。

栄養失調で筋肉もなく、床で踏ん張れず、すぐによろけてしまう状態でした。

おそらく飼い主から声をかけられることもなく、優しく撫でられることもなく、

空腹に耐え、身体の痛みや痒みに耐えながら過ごした7ヶ月だったと思います。

こんな生活を強いられたのにダイは人が大好きです。

それなのに飼い主から裏切られ海に捨てられてしまった。

スリールで保護してから、質の良い食事と、毎週の薬浴、筋肉をつけるための散歩、そして愛情を与え続けました。

ダイは日に日に、健康を取り戻し、笑顔を取り戻し、無邪気な子犬らしい犬へと変わっていきました。

どんなにひどい環境にいたとしても、必要なケアをしてあげることで、本来の美しい犬に変わることができるのです。

この子は「楓」

楓は、山で括り罠にかかり身動きが取れないところを保護されました。

罠にかかった足を失う事は免れましたが、身動きが取れない間、空腹に耐えられなかったのでしょう。小石やゴミを食べて命を繋いでいました。

保護当時、楓からは人への恐怖と恨みを感じました。

この子は「かりん」

かりんは、野犬の子として生まれました。

何があったのかわかりませんが、人への恐怖とリードなどの犬具にトラウマを持っていました。かりんも楓と同じ目をしていました。

人間なんか絶対に信じないという目です。

身体的には大きな病気もなく健康に見える２匹でしたが、心に大きな傷を負っていました。

楓もかりんも1年、2年…人と同じ空間で生活しながら、多くの時間をかけて、人と生きていくためのトレーニングを行いました。

少しづつ心を開き、感情を表現できるようになり、徐々に笑顔を見せてくれるようになりました。

今では楓もかりんも人と一緒にお散歩を楽しむようになりました。

その子のペースに合わせて諦める事なく愛情を注げば、犬は必ず応えてくれるのです。

この子は「しの」

健康で元気に見えましたが、
保護の後の健康診断で重い心臓病である事がわかりました。

いつ心臓が止まってもおかしくないと余命宣告を受けました。

スリールに来て、やっと幸せのスタートラインに立てたのに…

でも、しのは今、生きている。

残された時間がわずかなら、その時間を最高に幸せな時間にしてあげたい。

里親募集は中止して、しのが心地よく過ごせるように環境を整えました。

たくさん声をかけて、たくさん撫でて、たくさんの愛情で接しました。
すると、しのはニコニコ嬉しそうな笑顔を見せてくれます。
余命宣告から2年が経った今も、しのは元気です。

笑顔は生きる希望になるのです。

この子は「たつ」

多頭飼育崩壊現場からレスキューされた１匹です。
適切な医療を受けられず、保護当初から明らかに体調が悪かったたつ。
譲渡が難しいかもしれないけれど、どうしてもたつを助けたい、辛い状態を少しでも楽にしてあげたいと思いました。

検査の結果は、自己免疫性脳炎。
生涯治療が必要で、高額な治療費がかかります。
そんなたつのために、たくさんの人が治療費を支援してくれました。

多くの方の優しい気持ちによって、たつは適切な治療を受けることができて、生きる事が出来たのです。

そしてたつには、病気のことも治療費のことも、全てを受け入れてくれる家族ができました。
家族の真ん中には、いつもたつがいます。

たくさんの人の想いが一つになる事で救える命があります。